スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

真夏の読書会(1)


読書会を開く。友人7名に声をかけ、メンバーの自宅を借りての小さな会だ。


課題図書は『生物と無生物のあいだ』福岡伸一講談社新書)。DNA学説史をもとに、生命とは何かという根源に迫った一冊である。


このところ、プライベート読書は壊滅状態のわたし。読む本といえば、趣味の演芸本か、気楽なコラム集といった具合である。そんな身に、グリコプロティン、129系マウス、ポリメラーゼ連鎖反応なんて専門用語が涼しい顔して居並ぶ本書は、まるで筋トレなしで富士山に登らされるようなものだった。


しかし、こういう「ハードル越え」が読書会の醍醐味なんですね。未知の本と出会い、難儀しながらも読み、陣地をひろげていく。それを楽しみながらできるんだから、読書会とは、なんと手軽で有益なシステムなんだろう。


今回の読書会では、各自が読んだ範囲の中から、おもしろかった個所を発表する形式を採った。これ、斎藤孝先生の『読書力』(岩波新書)からいただいたノウハウなんですが、いやぁ、功を奏しましたね。


生命を司どる遺伝子が、実は化学物質で構成されていることに感銘した、というMさん。昨夜は興奮のあまり午前4時まで眠れなかったそうだ。かと思えば、文体に着目したのはTさん。本書には福岡氏が滞在していたニューヨークやボストンの風景描写が随所に出てくるのだが、この、理系新書にはめずらしいリリカルさが、よかった、との感想。


かくいう私は、野口英世の評価にビックリする始末。野口英世といえば、日本の偉人伝の筆頭を飾るヒーローでありますが、米国での評価は、まったく違うそうな。


〈彼の業績、すなわち梅毒、ポリオ、狂犬病、あるいは黄熱病の研究成果は当時こそ賞賛を受けたが、多くの結果は矛盾と混乱に満ちたものだった。その後、間違いだったことが判明したものもある。彼はむしろヘビイ・ドリンカーおよびプレイボーイとして評判だった。結局、野口の名は、ロックフェラーの歴史においてはメインチャプターというよりは脚注に相当するものでしかない〉(第1章より)


えーっ、そうなの? 業界でのリスペクトの低さ、というか、評価ゼロ状態に、驚くばかり。この部分、本書にとっては末節なんですが、福島県猪苗代湖畔に鎮座する野口英世記念館にまで詣でた身としては、ただ愕然とさせられた次第。あぁ、英世先生。


という具合に、1冊の本でも、8人いれば、当然、8つの視座がある。8人で読めば、そこから引き出される知識や疑問やアイデアが、足し算ではなく「かけ算的」に膨らんでいくものだな、と改めて実感させられた。


読書会のあとは、夏祭りの準備がそこかしこで始まった街を散歩しながら、近所の小料理屋へ。さらにエキサイティングな暑気払いへと突入したのですが、その様子は、また改めて。