腐海だより
風邪を引いてしまった。
昨夜、風呂に入った後、だらだらと「朝まで生テレビ」を見たのがまずかったか。とりあえず体が温まるものをと、鱈チゲをつくる。ピリ辛の鍋を喰らい、汗をドッとかいて布団に潜り込み、毒素追い出し作戦を決行。二時間後、効果あってか、かなり悪寒がやわらぐ。ふふふ、ちょろいもんだ。
すこし元気になったので、本でも読もうと『私の男』(桜庭一樹)を手にとる。これが、間違いのもとだった。数ページ読んで、まずい、と気づく。いかん。この本は病人の身で読んじゃいかん。健康体でないと受け止められない。
が、時すでに遅し。
巻置くあたわず。腐海に引きずりこまれ、ぐったりとしながらも止められない。感情移入できる人物が一人も出てこず、涙も笑いも感動もなく、不気味な触感だけが残って、読み終えたあとも、どんよりと沈思黙考するのみ。なのに、止められない。真摯なテーマであることは間違いないのだけど、読み手に体力を要求する本だ。いま、手を出しちゃいけなかった。
おかげで、治りかけていた風邪は急展開。またしても桜庭菌にやられてしまった。