スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

マガジンの時代

bluesnake2008-02-28



先週、三浦サンが逮捕されてからというもの、同年代の友人と顏を会わせるたびに「あの頃」の話題で盛り上がってしまう。ペイズリーのシャツ、景山民夫の「フルハム三浦」、裕次郎グラス。思い出すのは、どうでもいいディテールばかりってのが情けないのだが。


昨日の勝谷誠彦「コラムの花道」も、話題はこの事件。ロス疑惑が弾けた翌年、文春に入社、写真週刊誌『Emma』の編集部に配属された勝谷さん。社に持ち込まれた、三浦サンの「スワッピング写真」(あったなぁ…)を掲載するか否かで議論白熱する編集部の様子が、実におもしろい。最終的には全裸写真が誌面を飾ることになるのだが、それにGOサインをだした重鎮I氏の一言が、絶品。


三浦サンが逮捕されたのは、1985年9月11日。今はなき銀座東急ホテルの地下駐車場だった。勝谷さんによると、その日、三浦サンがホテルに赴いたのは、雑誌『ブルータス』の打ち合せのためだったとか。なんと、連載を持っていたそうな。


えっ、そうだったの?


てことで、我が家の押し入れをヒックリ返すこと1時間。見つけましたよ。『ブルータス』1985年11月1日号。


たしかに三浦サン、連載をしておられる。それも小説だ。タイトルは「ああ無情……青雲編」水戸刑務所で服役した10代の頃を綴った自伝的青春小説らしい。ハードボイルドタッチの文体で、なかなか読ませる。

これから暑い夏がやってくる。
あと何回もの夏を、冬を迎えねばならない身にとっては、そう急ぐこともない。
その日がくるまで、俺はけっして負けない


同号は元禄文化の特集号なのだが、グラビアページでは、三浦サンたら、モデルまで務めていたりする。ふんどし一丁で荒縄に縛られ、女王さまとからむマゾ男風の写真だ。これが、なかなかサマになっているんですわ。緊縛の指導は、団鬼六先生。本寸法だよ。


企画の仕掛人は、いまや、『ソトコト』でロハスな編集長をやっている小黒一三氏。殺人の容疑者を引っぱりだして小説を書かせたり、SM写真を撮ったりと、「あの頃」は雑誌が禍々しいチカラを持っていた時代だったなぁ。


この号の執筆、撮影を終えた直後に三浦サンは逮捕され、人生二度目のムショ暮らしに入る。自伝小説は、未完のまま闇に葬られたらしい。ちなみに、同誌12月1日号には、逮捕直前の三浦サンに密着した沢木耕太郎のルポが掲載されたそうだ。のちに、単行本『馬車は走る』に収録された「奇妙な航海」である。そうか、あれも『ブルータス』だったのか。