スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

立ち向かう者が生き残る

bluesnake2008-10-01


劇団四季がチケット代を「値下げ」する。


発表によれば、S席1万1500円→9800円に。A席9450円→8000円になるそうだ。他の席種もすべて値下げに踏み切るという。値下げ分は劇団四季の「前期経常利益の40%に相当する」そうで、一時的にはかなりの痛手になるだろう。でも、中長期的に見れば、これは大きな集客効果につながるに違いない。風雲児・浅利慶太らしい大英断。ウエブサイトに浅利氏のインタビューが掲載されており、なかなかの読み応え。特に、日本の興行界の悪弊「団体割引」をバッサリと斬っているあたりは、爽快のひとことである。


インタビュアー「団体で購入すると随分割引になる劇場もあると聞きますが…」


浅利 「日本の興行界の悪弊です。相当数の座席を団体扱いで販売し、その際には50%近くも割り引くケースすらある。ですから1万3000円の定価は本当の入場料ではありません。正価で買っているお客様には申し訳ないような、不公正なビジネスがまかり通っている」

私は、四季の舞台は年に一度観る程度のライトなお客だけれど、この英断を知って、一気に四季ファンになった。芝居好きは基本的には熱血体質なので、逆風に立ち向かう人間を見れば応援せずにはいられないのですよ。うーむ、これは「ウィキッド」に馳せ参じなければ。


清々しいニュースの一方で。


名古屋の御園座では、秋恒例の顔見世興行が始まった。料金を聞いて驚くなかれ。最低の三等席で、7000円(席数は少ないし、劇場の構造上、舞台が遠すぎる)。最高ランクになると、なんと、2万3000円! これが桟敷かというと、さにあらず。一階の前方五列を「特別席」と称して、かくなる料金で販売しているのです。


この料金設定は「襲名披露」という冠付きゆえ。今回の襲名は中村錦之助だ。新・錦之助丈は誠実で巧い役者であるものの、さほどの大名跡ではない。いわゆる実力派の中堅だ。まことに失礼ながら、この料金に見合った華を持ち合わせているか、と問われれば、首をひねらざるを得ない。


その上、今月は歌舞伎座国立劇場に加え、浅草で平成中村座の公演も行われており、全国四カ所で歌舞伎が上演されるという過剰供給状態。そのため御園座の出演者も「顔見世」にふさわしい顔ぶれとは言い難い。なのに、旧弊に従って「顔見世+襲名披露」の特別価格とは、いったいどんな勝算があるやら。


ちなみに高額で知られる京都・南座の顔見世も、御園座と同程度の価格設定なんですが、あちらは、ちゃんと「顔見世」にふさわしい配役になっているんですね。(まぁ、このあたりは好みの問題でもあるけれど、御園座は渋すぎ。役者の年齢が高過ぎると思う)


御園座は地元だし、秋の一日、ゆっくりと古典の世界に浸ってみるのも悪くはないのだが、こんな観客無視の公演には、足を運ぶ気力もないです。