スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

シンプルであれ

bluesnake2008-10-18



OSKの武生公演へ行ってきた。初日を観た後、なんだかねえ、リピートしたくなってしまったのですよ。それで、エイヤっと東海道線北陸線を乗り継いで、二週間ぶりに武生の街へ。


初回にも増してよかったです。


若手の劇団員ががんばっていて、可能性を感じます。力強くて、自由で、シンプルなところが、OSKの強みだなあと再認識。シンプルって、文字で書くと、なんだかそっけないけれど、いま、こういう時代には、重要なキーワードですよね。シンプルだからこそ変化自在だし、何者にでもなれるわけだから。


先日も少し書いたけれど、行きのJR車中に劇団四季の中吊りが出ていた。真っ白な地に大ぶりの活字で「料金を下げます」。続くコピーが、なかなか読ませたので、思わずメモしてしまう。

劇団四季は本年、創立五十五周年を迎えました。今日まで続けてこられましたのも、長年にわたり四季を支え、ご観劇くださったお客様のお力によるものです。ご支援に感謝し、心の底から御礼申し上げます。劇団四季は、皆様のもとに「人生を生きる感動」を描いた作品をお届けする芸術団体です。同時に、所属員約1200名の生活を支え、劇団活動に専念できる環境を整えるための「経済団体」でもあります。
四季五十五年の道のりは、三十年貧苦の連続でした。しかし、その後四半世紀は安定した経営を続け、利益も出ております。
そこへ昨今の経済状況、石油等原材料費の上昇等が社会を直撃し、消費財の値上がりがお客様を苦しめております。この現状を見て、劇団四季は決断いたしました。永年のご恩に報いるために入場料の値下げを行います。


これで全文。あえて「経済団体」という言葉を強調しているところが、素直にかっこいいと思う。


芸術か生活か。芸術活動に携わる人間にとっては、これ、永遠の課題。好きなことで食べて行きたい。技芸だけで生活を築きたい。実現させるには、もちろん実力が根本。だけど、そこに「明確な戦略」が加わって、ようやく結実するんだよね。(このあたり、かなり自戒を込めてます)


私は、劇団四季のことは、さほど詳しくない。でも、いまや全国九ヶ所に自前の劇場を持つ日本一のカンパニーにも艱難辛苦の歳月があったことは知っている。昭和五十四年にコーラスラインがヒットするまでの、「貧苦の連続」時代のあれやこれやが、一演劇ファンとして記憶の底にある。貧苦から脱出するために、どんな戦略を掲げ、どんな知恵を絞ったのか。そこには「シンプル」というキーワードが、存外、あったんじゃないだろうか。