スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

小さな楽しみこそ

bluesnake2008-10-21



福井県・武生。

OSKの公演を観るために、この秋、初めて訪れたんですが、実にいい街だった。駅に降り立った瞬間、気に入りましたね。なんたって駅前に、悪しきサラ金の看板がない。見えるのは、ゆったりとした通り。正面には荘厳な神社。


武生は、奈良時代国府が置かれていたというから、歴史の古さは京都や奈良にも匹敵するほど。その後、戦災にも震災にも遭っておらず、奇跡的なまでに昔の(おそらくは昭和初期のころの)家並が残っているんですね。地図を見てみると、町家と蔵の数がとにかくすごい。寺院や小体な料理屋が並ぶ「寺町通り」、木工職人の工房が軒を並べる「タンス町通り」などは、その最たる場所。歩いてみると、境内から木魚の音が聞こえ、空を仰ぐとカラスが鳴き、割烹着姿の奥さん優雅に水をうっている。なんだかタイムスリップ感覚に襲われそうな、そんな不思議な味わいのある街。


かといって、京都や奈良のように、大々的に観光化はされてない。奥ゆかしいというか、派手なことは嫌いというか、頑固な姿勢が感じられて、そこが、また実にいい。(こういうところ、OSKにちょっと似てませんか?)


とりわけ気に入ったのが、商店街。蔵や洋館など古い建物を生かしたモダンな通りになっているんですね。今のご時世「空き店舗」は地方商店街の宿命だけど、武生では、それをギャラリーやカフェなどに転用して、街のサロンとしてうまく再生している。街の活性化って、お金じゃない。知恵と工夫なんだなと、改めて実感。


いちばんの印象は「小さな楽しみの多い街」ということ。派手な娯楽施設はないけれど、ギャラリーの一角で子供の手作り教室がにぎわっていたり、週末の夜、カフェでコンサートがあったり、街の有志が骨董市を開いたりと、日々の楽しみが、いろいろとある街。これ、些細なことかもしれませんが、すごく重要なこと。「日常生活の文化度」って、生きやすさのバロメーターだもの。


人口八万と小規模な街ながら、武生の文化力は相当なものです。まさに隠れた本格派。あぁ、こういう街だから、OSKの公演も根付いたんだな、としみじみ感じましたね。


今回は二度とも日帰りだったけれど、次回はぜひ泊まりがけで行きたい。来年? いやいや、まだ千秋楽まで二週間あるし、もう一度、行きたいんですが……人間やればできる。鋭意スケジュール調整中です。