スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

川風の幸福

bluesnake2009-06-06



所用あって難波へ。で、用事を片付けた後、そそくさと中之島へ向かう。


じつは昨日から中之島でOSK・高世麻央の公演『Blue amber』が行われている。せっかくだからと、会場のABCホールへ足をのばし、ホールの「外観だけ」拝んでみる私。うーむ、我ながら行動がセコい。みみっちい。現地まで行ったなら、観ろよ!


いや、迷いに迷ったんですよ、この公演。でも、来月は南座が控えているし、うれしいことに8月も舞台がめじろ押しのOSK。私の乏しい予算では、どう見積もっても全公演を見るのは無理。そんな結論に達し、今回は涙をのんでパスした次第。くうう、高世さん。


思い切り後ろ髪を引かれながら、中之島かいわいを散策。ABCホールがあるのは、堂島川のリバー・サイドに誕生した「ほたるまち」という地区。中之島エリアの「端っこ」に位置するせいか、どこかのんびりした空気が流れていて、気持ちのいいロケーションだった。


行き交う遊覧船をながめつつ「水辺の劇場」はいいなあ、と再認識。去年の夏、訪れた博多座もそうだが、私の場合「居心地がいい」「また行きたい」と感じる劇場は、ほとんどが川べりにある。かつての中座、松竹座、南座宝塚大劇場。いまは浅草寺境内へと場所を移してしまったが、平成中村座も、以前は隅田川べりに小屋を建てていた。上演中、川を行く船の汽笛がかすかに聴こえ風情があったのだ。


故郷の四国・琴平には金丸座がある。金丸座も現在は山の中腹へ移転してしまったが、私が小学生のころまでは、川に程近いネオン街の一角あって、その艶やかなロケーションは、子供心になんともそそられるものがあった。


阿国の歌舞伎踊りが、鴨川の四条河原で生まれた故事を出すまでもなく、昔から芸能には、水が付きもの。川は、此岸(現実)から彼岸(舞台)へ精神を渡すための偉大なる装置なのだ。


なあんて、理屈は良くわからないけど、水辺で芝居を観ると、心もからだもゆるゆる〜と気持ちよくほぐれていくのは、確か。観劇後、川風を受けつつ、舞台の余韻に浸るのも至福の時間だし。