スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

レビュー in KYOTO 第1部

さて、「レビュー in KYOTO 3」千秋楽の感想。


座席はフトコロ事情を鑑みて、泣く泣く三階席。とはいえ、花道スッポンもばっちりと見えるし、視界は良好。両サイドには、偶然にもレビュー初体験のご夫婦と女子高生コンビが座り、彼らの反応がとても面白かったんですが、それはまた別稿にて。まずは第1部の感想から。「偏愛」に満ちておりますので、その点はどうぞ、ご寛容に。


第1部 日舞レビュー「さくら颱風 真夏の京も桜満開」


冒頭、花道スッポンから桜花さんが登場するや否や、「オウカ!」「待ってました!」一斉に大向がかかる。オジさまたちの威勢のいい声。京都の暑さにバテ気味だった私も、この声で一気にテンションアップ。そうだよ、このノリ、これがOSKだ、と嬉しくなる。


■第一場「プロローグ」


幕開きは、テーマソングに乗って若衆&遊女の総踊り。舞台に灯りが入った瞬間の、まぁ、華やかなこと。まさに「来たー!」って感じ。ゾクゾクする。


続いて、娘役の優雅な舞い、そして男役トップ三人衆、桜花昇ぼる、高世麻央、桐生麻耶による「天下三美少年見参」。ぐふふ、もう三階席からオペラグラスで集中砲火ですよ。御三方とも美少年というには妖艶さが勝っていて、気圧されそうな色気。くーぅ、もどかしい。肉眼で見たい。バカバカ、私のバカ、なんで一階席を買わなかった! この時点で、早くも激しく後悔。


■第二場「真夏乃戀」


高世麻央、朝香櫻子コンビの連れ舞い。先日も書いた通り、わたくし、このシーンで高世さんの色香にノックダウンさせられました。高世さん、微妙な表情の移り変わりが、とにかく絶品ですね。手の動きが美しいのなんの。あぁ、近くで観たああああい。後悔がどんどん膨らんでいく。そんなこんなで、若衆・高世サマにロックオン状態だった私には、踊りの内容はほとんど記憶なし(笑)。音楽が甘やかでけだるく、良かったです。


■第三場「桜の嵐」


チェリーガールズ登場。ここで、ちょっと冷める。いや、私、チェリーガールズ、大好きなんですよ。この、OSKならではの娘役ユニットがいいなあ、と思うのは、どんなにキャピキャピだろうがアイドルしようが、一端踊りだせば、迫力満点のダンスを見せてくれる。そこが魅力だと思っておりますので……。今回は、そういう骨太さが見られず、やや残念。


■第四場「真夏の夜の夢


夏の夕べ、思い思いの遊戯に興じる童女たち。わらべ歌のような幻想的な音楽にのせて、パントマイムで進行するシーン。懐かしくも切ない情景。あぁ、こういうのもレビューになり得るのね、と新鮮な感動。


そして、花道から「阿波踊り」の一団が登場。舞台上手からは「風の盆」の一団が現れる。火花を散らしての踊り対決。次第にヒートアップするダンスバトル。風の盆といえば、胡弓の哀切な伴奏が有名だけど、そのメロディーと情趣を残しつつ、大胆にアレンジされた音楽が実にいい。ビートのきいた「おわら節」。あのゆるやかな民謡が、こんなにカッコ良く聴こえるとは。驚きました。アレンジの勝利。


と、ここへ、花道から桜花さん登場。イナセな若様の出で立ち。手には松明(たいまつ)を掲げている。夏の京都といえば、これしかない、大文字だ! ということでバトルに割って入る。ここ、大文字が電飾演出なんですが、できれば炎が欲しかったなあ(無謀です、それ)せっかく松明を持って登場するのだから、オリンピック開会式みたいに、桜花さんが点火したらパーッと炎があがり、夏の夜空に「大」の字が揺らめいて、見栄を切る若様。そんな仕掛け花火的な演出が観たかった(だから、本火は無理です)盛り上がっただろうに。


続いては、桜花昇ぼる、河逢こころの連れ舞い。いい感じにエロチックで、どきどきしました。あの、こころちゃんの胸元に差し入れられた桜花さんの手は妖しすぎます(笑)。隣の席に座っていたオジさま、このシーン、オペラで見入っておりました。


■第五場「幽霊退治人〜ごーすとばすたーず」


舞台は一転、妖気漂う薄闇に。若様・桜花さんは、音もなく現れた幽霊の一団に取り巻かれる。その霊力に操られ、黄泉の世界へ。


という展開で衣装を引き抜いて、幽霊に早変わりする桜花さん。出で立ちは、古式ゆかしき白装束に三角布(天冠=てんがん)。うーん、三角布が絵に描いたような幽霊アイコンで、ドリフのコントを思い出してしまう。


そこに現れるのが、三人の剣士。娘役の朝香櫻子、牧名ことり、折原有佐。殺陣は動き美しく、キレが抜群。これぞOSKの娘役! と溜飲の下がる場面。なのになのに、衣裳が「おっさん」なのだ。幕末浪士のような黒い着物に袴。しかも背景が黒の幕。その上、スポットが三剣士に当たってないので、三階席からでは彼女たちの活躍が見えにくい。初見のお客さんは、これ、娘役だとわからないのでは?


ここは三剣士が主役だと思うので、娘役らしい「鮮やかな衣裳」と、それを「見せる照明」が欲しかったなあ。で、欲をいえば、三剣士の活躍によって桜花さんも最後は黄泉の世界から蘇り、再びカッコイイ姿に戻って欲しかった。幽霊のまま踊り続けて、オチなしフェイドアウト……という感じで、微妙な肩すかし感。カタルシスが薄い。幽霊と女剣士というモチーフはいいのに、演出が……ううむ。労多くして効少なし。ホントにもったいない場面。


■第六場「桜の嵐」


再びチェリーガールズ。セリフが取ってつけたようで、残念。歌にするとか、一工夫あれば良かったのに。


■第七場「燃える夏」


舞台は、大正13年の松竹蒲田撮影所。日本で初めて開かれた水着ショーが題材。夏のビーチで遊ぶボーイズ&ガールズ。女の子の衣裳は、紅白ボーダーのクラシカルな水着。大正モダンというより、1950年代・フィフティーズの色彩感覚で、とてもポップ。歌もダンスも明るくていい。


そこへ、客席から二人連れが登場。来たー! 桐生麻耶&牧名ことりのご両人。遊び人のダンナと、それにやきもきする奥方という設定。『夫婦善哉』の柳吉&蝶子を彷彿させる。アドリブを交えて客席を沸かしつつ、舞台へ。芝居がうまい二人なので、アドリブも「余裕〜」って感じでいいですね。好きだわ、このコンビ。その後、桜花、高世、朝香、折原が加わって「いい男」と「いい女」の恋の駆け引き的なダンスへ。


ここ、男役の衣裳がスゴいです。カンカン帽にステッキ、そして、水玉の着流し(!)赤、青、黄の目が覚めるような「三原色トリオ」なのですよ。一瞬、「なんじゃ、こりゃ!」と椅子から落ちそうになったけれど、私、嫌いじゃないです、この突き抜けっぷり。どうせやるならとことん。その方が爽快で心地よい。そういう意味で、大好きかもしれない、このシーン。(でも、衣裳に目を奪われて、歌と踊りをほとんど覚えてなかったりするんですが……笑)


■第八場「真夏に浪漫の桜たち〜真夏の京も桜が満開」


そして、フィナーレ。プロローグと同じく若衆、遊女がずらりと並んでの総踊り。くるくる回る振りが多いのは、颱風に舞う桜のイメージなのだろうか。テーマソングが軽快なので、見ているだけでウキウキしてくる。日舞レビューの醍醐味、ここにありって感じだ。


その後、BGMに乗せて劇団員紹介。出演者が「一言コメント」付きで紹介される。私のような観劇歴の浅い人間には未知の劇団員さんが多いので、この紹介コーナーで、その人のポジションやキャラクターにふれることができ、うれしい工夫だった。ちなみに、桜花さんの紹介フレーズは「いつでもどこでも桜満開」。まさにドンピシャで、大きく頷きました。最後は、華やかな総踊りで幕。第一部終了。


第一部は、風の盆のアレンジとか、大正モダンならぬ大正ポップな場面とか、新しいものを取り込んでいくパワーが良かった。そういう挑戦的な姿勢が、とてもOSKらしいと思うので。残念ながら未消化だったけれど、幽霊の場面なんかも練り上げて工夫すれば、かなり面白くなるんじゃないだろうかと、今も思ってます。


(第2部へ続きます)