スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

娯楽作品の矜持

遅まきながら、来春の『春のおどり』に関して。


発表内容を知り小躍りしましたね。北林作品が、また松竹座で観られる。それだけで、寒い冬を乗り切るエネルギーがわいてくるというもの。「黄泉へ」というサブタイトルが気になるところだが、今度は冥界が舞台になるのだろうか。妖艶でダークな北林ワールドが、ますますパワーアップしそうな気配だ。


北林先生と言えば、先日うれしい報せがあった。我が友人Tさんが東京で極楽歌劇団『落語の国のプリンス』を偶然にも観てくれたのである。Tさん、北林先生の名も極楽歌劇団のことも知らなかったのだが、落語が題材と聞いて(Tさんは落語ファン)、ふらりと出かけてみたのだとか。結果、大当たり。とにかく脚本がよくできていて素晴らしかったとの感想を報せてくれた。それを聞いて、俄然、興奮しましたね。


「Tさん、その作・演出家こそ、なにを隠そうOSKで活躍してる先生なの」「来年の『春のおどり』も北林先生が演出するのよ。松竹座の舞台に乗ると、北林作品はさらに冴えるから!」。大プッシュしてしまう私。このTさん、じつはテレビドラマの脚本も書くベテラン作家。プロから褒められたこともあって、なんだかワタクシごとのようにうれしくなってしまったのですよ。


私は、生で観た北林作品は「桜彦翔る!」わずか一本だが、その秀逸さには舌を巻いた。厳しい制約(予算・上演時間・制作日程)がある中で、よくぞこれだけの舞台を作り上げたと思ったものだ。紗幕や照明を駆使した空間演出。歌劇の基本をしっかり押さえた作劇術。その上での「現代的」な味付け。(振り付けが斬新だった)。そして、ここが肝心なのだけど、演者の持ち味を活かし「さらなる可能性も引き出した」アテ書きの妙。このあたりの差配ぶりに「聞きしに勝るスゴ腕だ」と感服。北林ファンになったのである。(だから『落語の国のプリンス』を観にいけなかったのは口惜しい…)


北林先生という人は、きっと「職人部分」と「アーチスト部分」のバランスが絶妙な方なのだ、と思う。アルチザンとしての力量、クリエイターとしての矜持。両輪の操縦法に長けてこそ、秀逸なエンターテーメントは生まれるのだから。


Tさんは、来春の「春のおどり」を観たい、と言ってくれた。決して私の熱い訴え(笑)に根負けしたのではなく、北林佐和子という作家、その作品に命を吹き込むOSKというカンパニーを、プロの表現者としては見逃せないと思ったのであろう。