スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

20年目の発見

精華演劇祭の特別企画に行く。1989年に上演された唐組の舞台「電子城―背中だけの騎士ー」の上映会。


20年前の舞台を「記録映像」で振り返っておもしろいのだろうか、と少しばかり不安があった。ところが、まったくの杞憂。2時間を超す長尺の作品だったが、とにかく引き込まれた。後半は映像であることも忘れた。ラストは切なさが胸を打った。


49歳という脂の乗り切った時分の唐十郎が実に良いのである。圧倒的な存在感と飄々とした可笑しみ。そして、ただならぬ色気が満ちあふれている。こんないい役者だったんだ、と思い知った。


1980年代、状況劇場も唐組も何度か観たことはあるが、舞台そのものの、渦巻くようなエネルギーに目を奪われていたせいか、唐十郎本人に注目することはなかった。(なんという節穴)。それが、20年の年月を経て、不覚にも「役者・唐十郎」を発見とは。


上映会の後に、唐組の役者を囲んでの座談会があった。司会を務めた編集者・小堀純氏が唐さんを「疾走感がある人」と評した。疾走感、そう、疾走感なのだ。唐さんは動きの俊敏な役者ではないものの、どこか疾風(はやて)のような印象を受けるのだ。疾走感があって、まっすぐで……でも、それだけじゃない。慎みや翳りをしっかりと持っている役者。あぁ、私が好きな舞台人は、みんなそういう人だ、と改めて思ったのでありました。


新作の「百人町」は観られなかったのだが、久々にナマで唐組の芝居を観たいと思った。