『なるべく働きたくない人のためのお金の話』
大原扁理さんの『なるべく働きたくない人のためのお金の話』(百万年書房)を読みました。
大原さんは1985年生まれの33歳。高校時代に引きこもりを体験し、卒業後に上京。家賃7万円のシェアハウスに住み、アルバイトを始めたものの、がんばって働いても貯金さえできない生活に疲弊。その後、東京郊外の格安アパートに転居。介護ヘルパーとして週に2日働き、1ヶ月の収入は6〜7万円。残り5日は、質素な暮らしをしながら悠々自適な毎日を送っている、そんな仙人のような方。現在は台湾に移住し、ライターとして生活をしています。
この本は、『年収90万円で東京ハッピーライフ』『20代で隠居 週休5日の快適生活』に続く、大原さんの3作目。前2作も読んでいるんですが、最初は「年収90万円で暮らしていけるのか!?」と驚きながら手に取った状態でした。
でも、読み進めていくうちに心がほぐれていく感じで、妙に心地よかった。それで、3作目も読んでみたのです。
今作は、お金をテーマにしていますが、私もお金とのつきあい方はヘタで、学ぶところが多々ありました。
私は今まで生きてきて、ほとんど夢や目標を持ったことがないんです。するとどうなるかというと、いろんな可能性によく気がつくんですね。ゴールを設定してないから、右にも左にも行けるし、思わぬところに道を発見することもある。そして、そのときウキウキするほうを選んでいると、想像もしなかった方向に事態が展開していき、隠居のできあがり、というわけです。(P37)
「夢や目標を持たないと、いろんな可能性によく気づく」
たしかにそうかも。目標を掲げてしまうと、それに捕らわれて自由に動けなくなる。私も目標を設定するような人生を送ってこなかった。行き当たりばったりだった。でも、案外楽しく生きてきた気がする。川の流れに身をまかせるのは、悪くないです。
私は満足の最低基準を「好きなことをしているか」ではなく、「イヤなことをしないでいられるか」で判断しています。やり方は簡単。どうしてもイヤなこと、やりたくないことをどんどんリストアップしていきます。その中でも、一番やりたくないことは何か。それをやらずにいられる状態を最低限の満足ラインとします。(P51)
うんうん、大いに共感。私はイヤなことをやりたくなかったので、会社を辞めてフリーを選んだわけで。
特に苦手だったのが、ストッキング。夏の暑い日に肌にピタッと張りつく、あの不快感はダメだったな。それと、上司の自慢話。宴席で、やたら若い頃の自慢をする上司に限って仕事ができない輩が多かった。
フリーになってからも、やりたくない仕事に手を出してしまい、散々な結果に終わったこともある。教訓として、少しでもイヤな空気を感じたら、近寄らないようにしている。
子どものころに何をしているときが一番ハッピーだったかを思い出してみるといいかもしれません。(P85)
5年前に西村佳哲さんのワークショップへ通ったことがある。その中で「子ども時代に幸福だった情景を思い浮かべる」というワークがあった。私は、母と一緒に犬の散歩に行った時間や、夕方に薪で風呂を焚いていたことを思い出した。ささやかな日常の、穏やかなひとときだった。
子どものころの幸福感は、人間にとって「いずれ還る場所」なのかもしれない。
そして、お金とのつきあい方に関して、大原さんはこう言っている。
・とくに何もない一日でも、無事に生きられたことに感謝をする。
・他人を羨まず、いま目の前にいてくれる人やモノやお金を大切にする。
・同じお金を使うなら、いかにひとりでも多くの人がハッピーに、楽しくなるように使えるかを真剣に考える。
・本当に大事なものは何なのかを考えることから目を逸らせて、ありとあらゆる方法で心を急かしてくるものを、きちんと拒む。
(P175)