「圏外編集者」という生き方
先日、関西ライターズリビングに行ってきました。
この会は、ライターや編集者などライティングに携わる著名人を招いて、その仕事術をうかがう会です。9月のゲストは、編集者・ライターの都築響一さん。「圏外編集者」というタイトルがふさわしい、まさに異色の人です。私は、そのアウトサイダーぶりが好きで、新刊が出るたびに心待ちにして読んだほど。
都築さんの仕事術は、どれも出版業界へのアンチテーゼになっていて、痛快そのもの。
2012年前から週に1回メルマガを発行しているんですが、これがもう凄いとしか言いようがない。雑誌1冊もありそうなボリュームで、1号あたり250円という値段。サンプルが自由に読めますので、良ければご覧ください。
現在このメルマガだけで、収入の8割を得ているそうです。直販で8割とは、なかなか凄い。
たしかに日本は世界一の自費出版大国。コミケの3日間だけで、数百万円売る作家も少なくありません。「だから、書きたいことがあれば、自分で出版すればいい。既存のメディアに乗っかる必要はない」ときっぱり言い放つ都築さん。
書籍は全ページPDFで製作して、USBで販売。これなら在庫を持たずに済むし、写真を拡大して見てもらえるからだそうです。大いに共感しました。
以下、印象に残ったフレーズです。
■企画書は書かない
企画書になるものは、すでに前例があるから。そんなことに時間を費やすより、まず動く。面白さが見えてきたら、そこで提案する。
■自腹でもやりたいこと
やりたいことは、自腹を切ってでもやってきた。これが創作の原点。面白がってくれる人が出てきたら、商業ベースで進めていく。
■カメラは値段に惑わされない
あくまでも道具。中級品で良い。ただ、三脚、パソコン(レタッチ用)は良いものを。
■「圏外」はマジョリティ
『家庭画報』なんかの豪華な雑誌に素敵な部屋が載っているが、あんな部屋に住んでいるのは、ほんの一握り。9割の人は『TOKYO STYLE』みたいな部屋に住んでいる。だから、自分はマジョリティに光を当てている。
■自分は「色物」担当
秘宝館、ラブホ、居酒屋、スナックといろいろやっているが、その理由は「怒り」と「焦り」。なぜ誰もやらないのか? 他にやる人がいないからやっているだけ。
■保存活動は嫌い
無くなっていくのは、みんなが見捨てたもの。魅力が薄くなり人気がなくなったもの。無理に延命するのはどうか。ただ記録を残しているだけ。
63歳の都築さん。おそらく会場で最年長だと思うのですが、一番熱く、若く、エネルギッシュ、好奇心旺盛で、やりたいことが山のようにあって仕方ない。そんなトークにこちらも刺激を受けました。
生活の「リアル」を求めて世界の果てまでも旅する姿は、どこか現代の宮本常一ではないか。
そう感じました。