スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

水辺にある幸福

bluesnake2007-07-22



大阪2日目。昨夜の余韻に浸りながら中之島から天満へ。眩い日射しを浴びつつ、大阪の夏を楽しむ。


本日のお目当ては、天満天神繁昌亭。去年9月の誕生以来、行きたい行きたいと願いつつ、今日まで叶わなかった念願の場所。ようやく馳せ参じることができました。


明後日にひかえた天神祭の準備でにぎわう大阪天満宮。境内を抜けると、そこに現れたのは、なんとも可愛らしい小屋。目の前には天神橋筋の商店街、後にひろがるのは鎮守の森。そして、家並みの向こうを悠々と流れるは水の都のシンボル、堂島川土佐堀川。あぁ、水のある街なのだ。湿り気を帯びた夏の夜風がゆるりと渡ってくる。いいなぁ、このロケーション。


なんといっても寄席が「人の住む街」にあることにいたく感激してしまう。浅草、上野、新宿と、東京にも寄席はあるけれど、残念ながら、あちらはすでに特殊空間。生活の匂いはしやしない。


この流れ、この雰囲気。気分はすっかり上方モードになっているにも関わらず、繁昌亭で待ち受けるのは、バリバリの東京落語、立川談春だったりするんですが。


談春師、大阪で初めての独演会を、こともあろうに上方落語の根城で開く。そう聴けば、駆け付けたくなるのが落語聴きの性ってわけでして。


さて、繁昌亭です。足を踏み入れると、迎えてくれるのは、初代春団治愛用の赤い人力車。ロビーには、今は亡きキラ星たちのお写真が並んでいる。松鶴師、文枝師、春蝶師、そして吉朝師。枝雀師匠の一番弟子だった桂音也さんの肖像もちゃんと飾られているところに、大阪の情の濃さを感じて、グッと胸にしみました。


客席は、およそ250席。噺を聴くには、まさに最適の空間である。特筆すべきは高座の美しさ。新しい杉戸に緋毛氈、掲げられた書は、人間国宝桂米朝師の筆にて「楽」の一文字。演者を照らす灯りがまた素晴らしく、なんとも艶のある照明に工夫されている。ちょっと表現しづらいのですが、島之内あたりのお座敷の色香を再現した灯りというべきか。とにかくきれいです。この灯りを見るだけで、幸せな気分になれます、私は。


そうそう、寄席は、こうでなくちゃ。そんな独り言を繰りながら、開演時間。ちょっと上気した風情で高座に現れた談春の、まずは大阪お目見えトークから。これが実に含蓄があり、上方文化について考えさせられるものだったのです。


(以下、続きます)