スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

人生の九月

bluesnake2008-09-09


何十日ぶりだろう、こんなに爽快な空は。ようやく初秋の風が吹くようになった。あまりに心地よいので、仕事を放り出して海へ行きたくなる。


先日、宝塚雪組の舞台「マリポーサの花」のことを書いたんですが、劇中に「Sabor A Mi」という歌が登場した。「Sabor A Mi」は、メキシコで生まれたボレロの名曲。日本でもおなじみのトリオ・ロス・パンチョスが歌ってヒットしたので、ご存知の方も多いでしょうが、いい曲なのよ、これ。夏の暑さがやわらぎ、空気がほんの少し清涼になる時季、まさに今日のような晩夏の太陽の下で聴くと、なんとも言えず良いのです。


「Sabor A Mi」、日本語にすると「私の味」。直訳では、どうも「感じ」がでないんですが、長年ともに歩いてきた男と女が歳月を慈しむ。そんな歌。


若いころ燃えるように愛しあった二人。
年月を経て、自然と熱情は冷めていった。
濃密な、あの若い日々はもう二度と来ない。
でも、互いの身体に刻まれた「味わい」は、もう消えることなどないの。
だから、これからもときどき「私」を味わってね。
穏やかに、ゆっくりと……そんなふうに愛しあっていきましょう。


思いっきり意訳……いや、超訳すると、こんな内容。歳月を重ねることの「ほろ苦さ」と「切なさ」を、ラテンの国らしく、ちょっとエロティックに描いているんですね。


雪組の舞台では、音月桂がエネルギッシュに歌ってくれました。キーをグッと落とした男役ボイスで歌われると、ラテンナンバーってのは、妖しいまでにカッコイイものですね。音月さんの若さあふれる熱唱も素敵でしたが、私にとってのベストは、やはり本家のロス・パンチョスかな。まさに、歌声が、肌を通って身体に染み込んでくるようです。秋の海辺で、この曲を聴きながら、ラム酒など傾ければ、これぞ人生至福のひととき。


他にも、ラテンの貴公子ルイス・ミゲルや、メキシコの人気歌手ルセロのバージョンもおすすめです。ルセロ版は、マリアッチスタイルのオーケストラも聴きどころ。