作家と政治家
授賞式の堂々たるスピーチに見入ってしまう。さすが世界文学の雄、シンプルな言葉で的確に思いを伝えている。真摯で簡潔。老師の説教のような名スピーチだったと思う。
「作家は自分の目で見たことしか信じない。私は非関与やだんまりを決め込むより、ここに来て、見て、語ることを選んだ」
漢だぜ、村上春樹。
それにしても「動く村上春樹」を見るのは何年ぶりだろう。『ノルウェイの森』(1987年)がヒットしていたころ、インタビュー映像を見た覚えがあるので、22年ぶりか。いや……あれは別人だったかも(記憶があいまいで申し訳なし)とにかく私にとっては、ものすごく久方ぶりの「静止画じゃない村上春樹」だ。
で、一瞬、錯覚した。ハタ ツトム?
驚くほど似てませんでしたか。新生党(あったなぁ…)の党首にして、省エネスーツの推進者(今いずこ)羽田孜センセイに。村上春樹は、どうしても若いころの印象が強いので、羽田センセイとの相似ぶりは、今日まで気がつかなかった。
いや、顔はともかく、あの冷徹で簡潔なスピーチを聴いていると、村上春樹、政治家になっても成功したんじゃないかと、妄想してしまう。