美智子さまと新美南吉
いま、新美南吉の詩を読んでいる。
新美南吉といえば『ごん狐』や『手袋を買いに』で知られる童話作家だが、詩も書いていたことを、最近になって知る。
きっかけは、4月に放送されたNHK「運命 天皇の物語」第4話「皇后 美智子さま」
美智子さまは、幼少のみぎりから新美南吉の作品を何度も読んでこられたそうだ。皇室に嫁いでからも、言われなきバッシングに遭った際、新美南吉の童話『でんでんむしのかなしみ』を心の支えにしたという。
こんな話だ。
でんでん虫は、自分の殻に「悲しみ」しか詰まっていないと気づいて嘆く。別のでんでん虫にそのことを話すが、私も悲しみしか詰まっていないと言われる。そんなことを繰り返していくうちに、「悲しみは誰でも持っている。自分の悲しみは自分で堪えていくしかない」と、諦観を抱いて終わる。
ご自分の半生と通ずるところがあるのだろう。「悲しみは自分で堪えていくしかない」という一節が切ない。
美智子さまは、東日本大震災の被災地にも、この童話が掲載された新美南吉の本を何度か贈っている。
そんなことから、新美南吉に興味をもったのだが、詩も書いていたとは、不勉強なことに知らなかったのである。
ページをめくると、やさしい言葉で淡々と、人間の本質を探りあてている詩が多いことに気づく。
とりわけ印象に残ったのが「天国」という一編である。
天国
おかあさんたちは
みんな一つの、天国をもっています。
どのおかあさんも
どのおかあさんももっています。
それはやさしい背中です。
どのおかあさんの背中でも
赤ちゃんが眠ったことがありました。
背中はあっちこっちにゆれました。
子どもたちは
おかあさんの背中を
ほんとの天国だとおもっていました。
おかあさんたちは
みんな一つの、天国をもっています。