スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

まあるい月

bluesnake2007-09-25



十五夜中秋の名月。永田町では無粋な宴が繰り広げられているようだが、今宵は世俗の喧噪などシャットアウトして、月を愛でましょうぞ。

江戸の庶民は、大晦日、除夜の鐘を聞きながら、今年出会った美味しい七つの味(七味)と五つの楽しかったこと(五悦)と、今年出会って良かった三人(三会)を家族で話すのだそうです。で、除夜の鐘が終わるまでに話すことができたら「今年はいい年だったね」とお互いを喜び合ったそうです。もちろん、足らなかった場合は、「来年は出会えるといいね」と除夜の鐘を聞きながら願うのだそうです。


劇作家・鴻上尚史氏の新刊『醒めて踊れ』からの一節。この「七味・五悦・三会」の風習を、鴻上さんは、亡くなった杉浦日向子さんから聞いて、いたく感激したそうだ。以来、暮れになると、何度もエッセイに書いてきたという。


いやぁ、いいじゃない。


なんたって「七味」ってのが素敵。倹しい生活が信条の江戸庶民のことだから、年に七回も美味や珍味を口にはできないだろう。だから、「七味」といっても、縁日で食べた団子だったり、秋の夜長にちょいと出かけた二八そばがせいぜい。そんなささやかな愉しみを、しっかりと収集して、家族で分かち合う。なんと贅沢な江戸の人よ。


この国が置き去りにしたものを、今更ながら、思い知る秋の夕べ。