スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

人生の疵 映画「ドライブ・マイ・カー」

映画「ドライブ・マイ・カー」を観てきました。

 

主演の西島秀俊さん、ドライバー役の三浦透子さんも良かったけれど、複雑な役を演じきった、岡田将生さんが出色でした。

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映画の後、原作が収録されている村上春樹さんの『女のいない男たち』も読了。原作は短編なので、濱口竜介監督が、他のエピソードも織り交ぜて映像化したそうです。

 

説明を抑えた演出なので、冒頭は少し分かりづらかったけれど、ストーリーの進行につれて惹き込まれ、ラスト30分は圧巻。

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チェーホフの『ワーニャ伯父さん』(1897年)とシンクロさせた脚本が、素晴らしかったです。

 

「仕方ないわ。生きていかなくちゃ…。長い長い昼と夜をどこまでも生きていきましょう。そしていつかその時が来たら、おとなしく死んでいきましょう。あちらの世界に行ったら、苦しかったこと、泣いたこと、つらかったことを神様に申し上げましょう。そうしたら神様はわたしたちを憐れんで下さって、その時こそ明るく、美しい暮らしができるんだわ。そしてわたしたち、ほっと一息つけるのよ。わたし、信じてるの。おじさん、泣いてるのね。でももう少しよ。わたしたち一息つけるんだわ…」

 

このセリフを手話で表現しており胸に沁みました。

 

濱口監督といえば、脚本を担当した映画「スパイの妻」(2020年)も見応えがありました。

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スパイの妻・蒼井優さんと、身分を隠して結婚した高橋一生さんのラブストーリーかと思いきや、まったくさにあらず。中盤から話は急展開。高橋の正体が露見した後も、国家機密を知ってしまった夫に寄り添い、最後には精神を病んでしまう、という難役をこなした蒼井優さん。その鬼気迫る演技には凄みをも感じました。

 

「ドライブ・マイ・カー」に話を戻すと

 

今年のアカデミー賞で、作品賞を含め4部門にノミネートされました。
日本映画が作品賞候補になるのは、始めてだそうです。
3月の授賞式が今から楽しみです。