活字でしか伝えられないもの
先日、「関西ライターズリビング」というトークライブに行ってきました毎回、作家やライター、編集者など文筆にまつわるゲストを招いて、仕事術を聞く会です。
今回のゲストは、小説家の塩田武士さん。
塩田さんといえば、グリコ森永事件をモチーフにした『罪の声』で第7回山田風太郎賞、2016年の「週刊文春ミステリーベスト1」に選ばれた売れっ子作家。昨年は『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞も受賞しています。
『罪の声』は400ページを超す長編ですが、読み進めるうちにぐいぐいと引込まれた傑作でした。
塩田さんは、小説家になるために新聞社に入社。警察まわりを5年間続け、その間の取材ノートは克明に記録。すべてに見出しをつけて今も保管しているそうです。
トークでは、創作上のヒントを数々もらったんですが、印象に残ったノウハウを列記してみます。
●書き始める前に「なぜこの小説を書くのか」を400字でまとめる。
そうすると、書き始めてからブレることがない。
●ネタを出し惜しみしない。
全部出し尽くしたら、面白いネタが必ず湧いてくる。
●活字じゃないと伝えられないものを考え抜く。
活字は「情報の圧縮度」では、一番のメディア。
読む行為は、自分のペースで時間をコントロールできる。
映像や音楽、ゲームのように「受け身」ではない。
ここに「豊かさ」がある
●「虚実」はこれからの時代のキーワード
余談ながら、『罪の声』を読んだ印象で、塩田さんは理知的でクールな方だと思い込んでいたのですが、良い意味で裏切られました。
いやぁ、トークがうまい。面白い。
聞けば、10代の頃、お笑いの世界を目指していたとか。実際に漫才師として舞台にも立っていたそうです。