スルメ日記

ライターのユッキィ吉田が「ゆるい日常」を綴っております。

大人の宝塚


大学時代の旧友たちと飲む。その席で久々にK先輩と会った。K先輩は建設現場で指揮をとる40代。ガテン系の豪腕リーダーである。このKさんが、織田無道のような怪僧顔をほころばせつつ、意外なこと口にした。


タカラヅカ、いいよねぇ」


タカラヅカ? 歌劇の?


「あんなにカッコいいと思わなかったよ」


聞けばK先輩、この春、従兄弟の誘いで宝塚歌劇を観にいき、一気にファンになったという。ちょうど新人団員の披露目公演だったらしく濃緑の袴という正装で、さっそうと挨拶する姿に、いたく感激したそうだ。若くてきれいな女優陣が良かったの? と返せば、そうではないと強調する。純粋にエンターテーメントとして良かった。娯楽としてすばらしい。目を輝かせて語るのである。若い頃にプロとして舞台に立った経験があり、映画や小説にも鋭い批評眼をもつKさん。その人が、少女歌劇を絶賛という事実に私は驚きつつも、納得した。


「宝塚は40代から」なのである。


あの甘やかな世界は、人生の折り返しを過ぎなければ純粋には楽しめない。虚栄心とか、小賢しさとか、吹けば飛ぶような理屈とか、そういうもののアホらしさに気づいてはじめて、宝塚の魅力ってのは五臓六腑へと落ちていくような気がする。(ま、ちょっと大げさですが)20代の頃から、そんなことを漠然と考えてきたので、私は、これほど種々雑多な舞台を観にいきながらも宝塚だけは、未体験。ナマで観たことないんです。


真っ黒に日焼けした顔をしわくちゃにし、少女のように目を輝かせるKさんを見ながら、いよいよか、と思う。いよいよ私も宝塚適齢期?


Kさんの告白を発端に、酒席ではあっと言う間に「宝塚初体験ツアー」が企画される。40代の、未体験の人間で聖地へ乗り込もうという企画だ。このあたりの瞬発力、行動力(ただし遊興限定)は、さすが我が悪友である。


てなわけで、この秋、私も40ン年の沈黙を破って(?)ヅカ・デビューします。